この記事を書いた人
この記事は理学療法士歴7年・認定マッケンジーセラピスト(Cred. MDT)が執筆しています。
整形外科外来やリハビリの現場での経験をもとに、できるだけ専門用語を使わず、わかりやすく解説します。
はじめに

「鏡を見ると、肩が前に出ている」
「肩こりがずっと続いている」
「姿勢を正してもすぐ元に戻ってしまう」
このような悩みはありませんか?
実際にリハビリの現場でも、
- デスクワークで肩が前に出てきた
- 肩や首のこりが取れない
- 姿勢を意識しても続かない
という相談を受けることは少なくありません。
その肩の状態は、「巻き肩」かもしれません。
巻き肩は、肩が前方に出て内側にねじれた状態で、デスクワークやスマートフォンの使用が多い人に起こりやすいと言われています。
この記事では理学療法士の視点から、
- 巻き肩とは何か
- なぜ起こるのか
- 自分でできるセルフケア
- 医療機関を受診した方が良いケース
についてわかりやすく解説します。
まずはセルフチェック
以下に当てはまるものはありますか?
- □ リラックスして立つと、手の甲が前を向いている
- □ 壁に背中・後頭部・お尻をつけて立つと、肩が壁から浮く
- □ 横から鏡を見ると、肩が耳より前に出ている
- □ 肩こりや首こりを感じる
- □ デスクワークやスマートフォンの時間が長い
3つ以上当てはまる場合は、巻き肩の可能性があります。
※あくまで目安であり診断ではありません。
巻き肩とは?

巻き肩とは、肩(肩甲骨)が前方に滑り出て、内側にねじれた状態のことです。
肩甲骨が前に傾いて内側を向くと、肩全体が前に巻き込まれたように見えます。
特徴としては、
- 肩が前に出て見える
- 胸が縮こまり、背中が丸く見える
- 肩こりや首こりを伴いやすい
ことが多くあります。
肩甲骨の位置や動きの乱れは、肩のさまざまな不調と関係することが報告されており、放っておくと肩こりだけでなく、肩を動かしにくくなる原因になることもあります。
なぜ巻き肩になるのか?
巻き肩にはさまざまな要因があります。なかでも多いのが、次の3つです。
原因① 長時間の前かがみ姿勢
デスクワークやスマートフォンの使用が続くと、肩が前に出た姿勢が長く続きます。
特に30〜60分以上、同じ前かがみ姿勢が続くと、その状態が「いつもの位置」として身体に定着しやすくなります。
デスクワークによる首・肩の負担については、デスクワークで首・肩が痛くなる原因でも詳しく解説しています。
原因② 胸の筋肉が硬くなる
前かがみ姿勢が続くと、胸の前側の筋肉(大胸筋・小胸筋)が縮んで硬くなります。
特に小胸筋が硬くなると、肩甲骨が前へ引っ張られ、前に傾いた状態になりやすいことが知られています。
原因③ 背中側の筋肉が弱る
肩甲骨を後ろから支える筋肉(菱形筋・僧帽筋の中部や下部)が使われずに弱ると、前に引っ張る力に負けてしまいます。
つまり巻き肩は、「前側が硬く引っ張る」+「後ろ側が弱くて支えられない」という綱引きの不均衡で起こると考えるとわかりやすいです。
臨床で感じること
私自身の臨床経験では、デスクワーク中心でスマートフォンを長時間使う方に、巻き肩と肩こりが同時に起きているケースを多く経験します。
特に印象的なのは、「胸を張ろう」と頑張って姿勢を正そうとしても、すぐに元へ戻ってしまうという方が多いことです。
力を入れて良い姿勢を保ち続けるのは、なかなか続きません。それよりも、硬くなった前側をゆるめ、弱った後ろ側を働かせるほうが、結果的に楽な姿勢を保ちやすくなる印象があります。
巻き肩・猫背・ストレートネックの違い
巻き肩は、猫背やストレートネックと混同されやすいですが、主な場所が異なります。
| 項目 | 巻き肩 | 猫背 | ストレートネック |
|---|---|---|---|
| 主な場所 | 肩(前方・内ねじれ) | 背中(胸の丸まり) | 首 |
| 見た目 | 肩が前に出る | 背中が丸い | 首が前に出る |
| よく伴う症状 | 肩こり | 肩こり・腰の負担 | 首こり・頭痛 |
これらは関連していて、重なって起こることも少なくありません。自己判断だけで決めつけず、不安な場合は医療機関へ相談しましょう。
今日からできるセルフケア3選
① 胸を開くストレッチ

硬くなった胸の前側(大胸筋・小胸筋)をゆるめます。
ポイント
- 壁やドア枠に手を当て、身体を反対側へひねる
- 胸の前が伸びるのを感じる位置で20〜30秒キープ
- 反動はつけず、ゆっくり行う
② 肩甲骨を寄せる運動

巻き肩の改善でいちばん見落とされがちなのが、この「後ろ側を働かせる」運動です。胸を伸ばすだけでなく、弱った背中の筋肉を使えるようにすることが大切です。
ポイント
- 両肘を軽く曲げ、肩甲骨を背骨に寄せるイメージで引く
- 肩がすくまないよう、肩は下げたまま行う
- 10回程度を目安に
③ 姿勢と環境をリセットする
ポイント
- 1時間に1回は立ち上がり、肩を後ろに大きく回す
- モニターは目線の高さに、スマホは顔の高さに近づける
- 頭が前に出ないよう、軽くあごを引く意識を
※運動中に、強い痛み・しびれ・めまいなどが出る場合は中止してください。
医療機関へ相談した方が良いケース
以下の場合は早めの受診をおすすめします。
- 肩に強い痛みがある、夜間に痛む
- 腕や手にしびれがある、力が入りにくい
- 肩を動かせる範囲が大きく制限されている
- 安静にしていても改善しない
これらは、腱板の障害や頸椎の問題、胸郭出口症候群など、別の疾患が隠れている可能性があります。症状に応じて整形外科への相談を検討しましょう。
まとめ
巻き肩は、
- 長時間の前かがみ姿勢
- 胸の前側の筋肉の硬さ
- 背中側の筋肉の弱り
などが関係して起こることがあります。
大切なのは、「胸を伸ばすだけ」で終わらせず、「弱った背中側を働かせること」です。前をゆるめ、後ろを使えるようにする。この両方がそろってはじめて、楽な姿勢を保ちやすくなります。
まずは、
- 胸を開くストレッチ
- 肩甲骨を寄せる運動
- 1時間に1回、姿勢をリセット
から始めてみましょう。小さな習慣の積み重ねが改善につながります。
よくある質問(FAQ)
Q. 巻き肩は自分で治せますか?
A. 軽度であれば、姿勢の癖やセルフケアの見直しで改善することが多いです。ただし長年の習慣による巻き肩は、改善にある程度の時間がかかることもあります。
Q. 胸のストレッチだけで治りますか?
A. ストレッチで前側をゆるめることは大切ですが、それだけでは戻りやすくなります。背中側の筋肉を働かせる運動を合わせると、改善した姿勢を保ちやすくなります。
Q. 猫背とは違うのですか?
A. 関連しますが別物です。巻き肩は肩が前に出て内側にねじれた状態、猫背は背中(胸)が丸まった状態を指します。両方が重なって起こることもあります。
Q. 寝るときの姿勢は関係ありますか?
A. 横向きで身体を丸めて寝る習慣などが、肩を前へ巻き込む姿勢に影響することがあります。
関連記事
参考文献・参考資料
- Kibler WB, Ludewig PM, McClure PW, Michener LA, Bak K, Sciascia AD. Clinical implications of scapular dyskinesis in shoulder injury: the 2013 consensus statement from the ‘Scapular Summit’. Br J Sports Med. 2013;47(14):877-885.
- Ludewig PM, Reynolds JF. The association of scapular kinematics and glenohumeral joint pathologies. J Orthop Sports Phys Ther. 2009;39(2):90-104.


コメント