この記事は理学療法士・認定マッケンジーセラピストが執筆しています。
はじめに

「マッサージに行っても翌日には元に戻る」
「湿布を貼っても一時的にしか楽にならない」
「肩こりと長年付き合っているが一向に改善しない」
このような悩みはありませんか?
肩こりは日本人にとても多い症状のひとつです。厚生労働省の国民生活基礎調査(2019・2022年)でも、肩こりは男女ともに自覚症状の上位に入っています。
しかし多くの方が「マッサージや湿布で一時的に楽になるが、またすぐ戻る」という経験をしています。
なぜ肩こりは繰り返すのでしょうか?
肩こりには、同じ姿勢が続くこと、体を動かす量、ストレスや睡眠など、いくつもの要因が重なっていることが多いと考えられています。マッサージや湿布はつらさを和らげる助けになりますが、こうした生活の中の要因がそのままだと、こりが戻りやすくなります。
この記事では理学療法士の視点から、肩こりが繰り返す理由、ストレスや「動かない時間」との関係、今日から試せることを、一般の方向けにわかりやすく解説します。
セルフチェック
以下の項目に当てはまるものがあるか確認してみましょう。
• マッサージに行っても、数日でまた元の状態に戻る
• 仕事のストレスが強い時期ほど、肩こりがひどくなる
• 夜、なかなか寝つけない、または眠りが浅いと感じる
• 肩を回すと、ゴリゴリと音がしたり詰まった感じがする
• 気づくと肩がすくんで、耳に近づいている
当てはまるものがあれば、この記事の内容が参考になるかもしれません。数で判定するものではなく、自分の肩こりの傾向を知るための目安です。
原因① 姿勢の問題だけではない
肩こりというと「姿勢が悪いから」と思われがちです。しかし実際には姿勢だけが原因ではありません。
マッサージで戻ってしまう理由
マッサージや湿布は、筋肉の緊張を一時的にほぐし、つらさを和らげることはできます。ただ、筋肉が緊張しやすい生活の状態が変わらなければ、こりは戻りやすくなります。
臨床でも「毎週マッサージに通っているけれど、すぐ戻ってしまう」という相談はよく聞かれます。マッサージ自体が悪いわけではなく、日常の過ごし方とあわせて見直すことが大切です。
姿勢より「動かない時間」に目を向ける
姿勢と首や肩の痛みの関係については研究でも結果が分かれており、姿勢だけで説明できるものではありません。
良い姿勢でも、同じ姿勢を長く続けると筋肉が休む時間がなくなり、こわばりを感じやすくなります。大切なのは、姿勢を正し続けることではなく、こまめに姿勢を変えることです。
「良い姿勢を保とうとすると疲れる」という方は、次の記事も参考にしてください。

原因② 心理社会的ストレス

肩こりは筋肉だけの問題ではなく、ストレスや睡眠などの心の状態や生活環境も関係していると考えられています。
ストレスでなぜ肩がこるのか?
ストレスを感じると人の身体は無意識に緊張します。
具体的には、
- 肩に力が入る
- 呼吸が浅くなる
- 食いしばりが増える
- 睡眠の質が低下するなどが起こることがあります。
この状態が続くと、首や肩周りの筋肉が休まりにくくなる可能性があります。
ストレスと肩こりの関係
「肩こり」という言葉は日本ではよく使われますが、英語にはぴったり当てはまる言葉がなく、海外では主に「neck pain(首の痛み)」として研究されています。
オーストラリアの事務職の方を1年間追跡した研究では、強い心理的ストレスを感じている人ほど、首の痛みが出やすい傾向が見られました。ただし小規模な研究で、統計的に確かな結果とまでは言えず、ストレスだけで肩こりが説明できるわけではありません。
臨床でも、仕事のストレスや睡眠不足が続いている時期に肩こりが強くなる、という方は少なくありません。マッサージだけではすぐ戻ってしまう方は、ストレスや睡眠の状態もあわせて見直してみる価値があります。
原因③ 肩甲骨まわりを動かす機会が少ない
体を動かす機会が少ない生活の中で、見落とされやすいのが肩甲骨まわりの動きです。
肩甲骨まわりが動かないと何が起きる?
肩甲骨は、腕と体をつなぐ骨です。デスクワーク中心の生活では、肩甲骨が長い時間同じ位置にとどまりやすくなります。
すると、肩甲骨まわりの筋肉がこわばりやすくなり、首や肩の重さ・だるさを感じやすくなる方がいます。ただし、肩甲骨の動きと肩こりの関係は、研究でもまだはっきりとはわかっていません。
肩甲骨の動きを感じてみる
腕を真横に広げて、ゆっくり後ろに引いてみてください。肩甲骨が背骨のほうへ寄っていく感覚があるか、意識してみましょう。
これは良し悪しを判定する検査ではなく、普段あまり動かしていない部分に気づくためのものです。動かしにくい、左右で感じ方が違うという方は、後で紹介する運動を試してみてください。痛みが出る場合は無理に行わないでください。
臨床で感じること
肩こりの相談を受けていて、共通して感じることが2つあります。
ひとつは、「毎週マッサージに通っているのに、すぐ戻ってしまう」という方が多いことです。マッサージ自体は悪いものではありませんが、つらさを一時的に和らげるものなので、動かない時間やストレス、睡眠といった日常の要因もあわせて見直すことで、楽な状態が続きやすくなる方が多いと感じています。
もうひとつは、仕事のストレスや家庭環境、睡眠不足を抱えている方ほど、肩こりが長引きやすい印象があることです。睡眠がとれるようになってから肩こりが軽くなった、という方も少なくありません。
肩こりは筋肉だけの問題ではなく、生活全体の状態が反映されやすい症状だ、というのが現場での実感です。
今日から試せる対処法3選
① ストレス管理と睡眠を見直す
姿勢や運動だけでなく、ストレスや睡眠の状態を整えることも、肩こりと付き合ううえで大切です。
• 寝る前にスマホを見る時間を減らす
• 入浴で身体を温める
• 深呼吸を意識する
睡眠の状態が良くなることで、肩こりが軽くなる方もいます。
② 肩甲骨を意識的に動かす
肩甲骨寄せ運動
椅子に座った状態で両肘を90度に曲げ、肘を後ろに引きながら肩甲骨を背骨に向かって寄せる。
5秒キープして戻す。これを10回繰り返す。
胸のストレッチ
両手を後ろで組み胸を軽く開いて10秒キープ。1日数回、気持ちよく感じる範囲で行いましょう。痛みやしびれが出る場合は中止してください。

③ 30〜60分ごとに立ち上がって動く
同じ姿勢を続けすぎないことも大切です。
スマホのタイマーを30〜60分にセットして、鳴ったら立ち上がって少し体を動かす習慣をつけましょう。
⚠️ こんな症状がある場合は医療機関へ
以下に当てはまる場合は単純な肩こり以外の可能性があります。早めに整形外科への相談をおすすめします。
・手や腕にしびれがある、力が入りにくい
・箸を使う、ボタンをとめるなど、手の細かい動きがしにくい
・歩きにくい、足がもつれる
・安静にしていても強く痛む、夜間も痛みが続く
・頭痛やめまいを伴う
・発熱や、原因の分からない体重減少がある
・がんの治療歴がある
・転倒や事故のあとから症状が出た
・症状が長く続いている、悪化している
肩こりの中には頚椎疾患・神経症状・肩関節疾患などが関係している場合もあります。
「ただの肩こり」と我慢しすぎず必要に応じて専門家へ相談することも大切です。
特に、胸の痛み・息苦しさ・冷や汗を伴う肩や腕の痛みや、突然の激しい頭痛がある場合は、心臓や脳の病気の可能性もあるため、すぐに医療機関を受診するか、救急車を呼んでください。
まとめ
肩こりが繰り返す背景には、マッサージだけに頼っていること、ストレスや睡眠の状態、動かない時間の長さなど、いくつもの要因が重なっていることが多いと考えられます。
姿勢を正すことだけに意識を向けるのではなく
• ストレス、睡眠を見直す
• 肩甲骨まわりを動かす
• こまめに身体を動かす
この3つを、できるところから取り入れてみてください。
まずは今日、ストレスの状態、睡眠、座りっぱなしの時間を振り返るところから始めてみましょう。
よくある質問
Q. マッサージに行っても肩こりが治らないのはなぜですか?
A.マッサージは、緊張した筋肉を一時的にほぐし、つらさを和らげる助けになります。ただ、動かない時間の長さやストレス、睡眠など、日常の要因がそのままだと、症状が戻りやすくなることがあります。
Q. ストレスと肩こりは本当に関係ありますか?
A. 関係する可能性があります。ストレスが続くと、無意識に肩に力が入ったり、眠りが浅くなったりして、肩こりが長引く一因になることがあります。ただし、ストレスだけが原因とは限りません。
Q. 肩こりを繰り返さないためには、どうすればいいですか?
A. マッサージだけに頼らず、こまめに体を動かすこと、ストレスや睡眠を見直すこと、肩甲骨まわりを動かす習慣をつけることを、できるところから組み合わせてみましょう。
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参考文献
・厚生労働省. 国民生活基礎調査(2019年・2022年).
・Hush JM, Michaleff Z, Maher CG, Refshauge K. Individual, physical and psychological risk factors for neck pain in Australian office workers: a 1-year longitudinal study. Eur Spine J. 2009;18(10):1532-1540.


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