この記事は理学療法士・認定マッケンジーセラピスト(Cred. MDT)が執筆しています。整形外科外来やリハビリの現場での経験をもとに、できるだけ専門用語を使わず、わかりやすく解説します。
夕方になると、足の裏やすねが重だるい。長く歩くと、足が疲れて痛くなる。ふと見ると、土踏まずがぺたんと低い。
「扁平足だから、しかたないのかな」——そんなふうに、あきらめていませんか。
でも、扁平足でも、痛みや疲れをまったく感じずに過ごしている人は、たくさんいます。同じ「土踏まずが低い足」でも、困る人と困らない人がいる。その差は、足の”形”より、足の”使い方”にあることが多いんです。
この記事では、扁平足で足が疲れる・痛くなる理由を、体の使い方も含めてお伝えします。そのうえで、家でできるセルフチェックと、その結果に合わせたセルフケアをご紹介します。
※ ただし、最初に必ず読んでください。 次の症状に当てはまる場合は、この記事のセルフケアより先に、医療機関を受診してください。
⚠ まず確認|セルフケアより受診を優先する症状
扁平足そのものは、多くの場合、急を要するものではありません。ただし、次のような場合は、自己判断で運動をせず受診してください。
すぐに受診したい
- 転んだ・ひねった後から強く痛み、体重をかけて歩けない
- 足やくるぶしが赤く腫れ、熱を持っている、発熱を伴う
- 急なしびれ、足に力が入りにくい
- 安静にしていても強く痛み、日ごとに悪化している
急がなくても、一度相談したい
- 大人になってから、片足だけ土踏まずが下がってきた
- 内くるぶしの後ろから土踏まずにかけて、痛み・腫れがある
- 以前はできた片脚でのかかと上げが、できなくなった
- 痛みが数週間続く、歩ける距離が短くなってきた
- 両足の痛みに加え、他の関節痛や長い朝のこわばりがある
特に、大人になって片足だけアーチが下がる・内くるぶしの後ろが痛む場合は、アーチを支える筋肉(後脛骨筋)の腱に問題が起きていることがあります。「扁平足だから」と決めつけず、整形外科などで相談してください。
これらに当てはまらない方は、このまま読み進めてください。
なぜ、扁平足で足が疲れる・痛くなるのか

足の内側には、かかとから親指の付け根にかけて、骨が弓のように並んだ「土踏まず(内側のアーチ)」があります。このアーチは、骨だけでなく、後脛骨筋(こうけいこつきん)・長腓骨筋(ちょうひこつきん)といった筋肉や、足裏の細かい筋肉、そして足の指を反らすとアーチが持ち上がる”バネ”の仕組みで支えられています。扁平足は、このアーチが低くなった状態です。
ただ、ここが大事なところ。アーチが低いこと自体が、痛みや疲れの原因とはかぎりません。
歩くとき、足には2つの役割があります。着地の瞬間は、衝撃を受け止めるためにやわらかく。地面を蹴り出す後半は、キュッと引き締まって硬い支点に。この「やわらかい ↔ 硬い」の切り替えがスムーズな足は、アーチが低くても疲れにくいんです。
疲れ・痛みが出やすいのは、この切り替えがうまくいかず、歩く後半になっても足がやわらかいまま——ぐにゃっと潰れたままのとき。やわらかい足に負担が集まって、足裏やふくらはぎが余計に頑張り、疲れや痛みになって出てきます。
もちろん、原因は一つではありません。歩く量の急な増加、靴との相性、体重、足首の硬さなども重なります。だからこそ「扁平足だから痛い」と決めつけず、足がちゃんと働けているかを見ることが大切です。
臨床で感じること|確認したいのは「歩く後半」
私が扁平足の方を診るとき、一番よく確認するのが、この**「歩く後半で、足を固められているか」**です。
困っていない扁平足の人は、アーチが低くても、蹴り出しのときにちゃんと足が締まります。逆に、疲れや痛みが出る人は、後半になっても足が締まらず、潰れたまま。ここが、私が感じる一番の分かれ道です。
もう一つ。足が内側に倒れ込むと、その影響は足だけで終わりません。かかとが倒れる → すねが内側にねじれる → 膝が内側に入る(ニーイン)、というように、上へつながっていきます。だから私は、足の裏だけでなく、足首・膝・股関節、そして歩き方まで含めて診ることを大切にしています。

目指すのは、アーチの形をむりやり作ることではありません。**「扁平足でも、ちゃんと働く足」**に近づけることです。
家でできるセルフチェック|どの働きが苦手?
まず、後ろから足を見てみましょう。かかとの外側から、小指側の指が何本も見えるなら、足が内側に倒れ込んでいるサインです(too many toes と呼ばれます)。
そのうえで、次の4つで「どの働きが苦手か」を確かめます。これは診断ではなく、どのケアから始めるかの目安です。痛み・しびれが出たら中止してください。
① 立つと、アーチが下がる?
イスに座ったときは土踏まずがあるのに、立つと大きく下がるなら、体重に応じてアーチがつぶれるタイプです。
② かかと上げで、足が安定する?
壁に手を添え、両脚でゆっくりつま先立ち。内側に大きくぐらつく・親指の付け根が浮く・左右差が大きいなら、足を固める働きが弱いサインです。(内くるぶしの後ろが痛む場合は、無理せず受診を)
③ 足首が硬くない?
壁の前に片足を置き、かかとを床につけたまま膝を前へ。少し前に出しただけでかかとが浮く・足が内に倒れるなら、足首が硬いサインです。
④ 膝が内に入っていない?
足を腰幅に開いて浅くスクワット。膝がつま先より内に入るなら、足だけでなく股関節の使い方も関係しています。

チェック結果に合わせたセルフケア
先にお伝えすると、扁平足の骨の形そのものを、自分で作り変えることはできません。 でも、足の筋肉の働きや、体重のかけ方は練習で変えられます。全部やる必要はありません。当てはまった所から始めてください。
| チェック結果 | 最初に試したいケア |
|---|---|
| ① 立つとアーチが下がる | ショートフット |
| ② かかと上げでぐらつく | ゆっくりかかと上げ |
| ③ 足首が硬い | 足首・ふくらはぎのストレッチ |
| ④ 膝が内に入る | 股関節の運動 |
運動後まで痛みが強く残る場合は、回数や強さを減らしてください。

① ショートフット(アーチが下がる人)
イスに座り、かかと・親指の付け根・小指の付け根を床につけます。足の指は丸めず、土踏まずだけを軽く持ち上げる。強く力まず、指が丸まらない範囲で。目安:5秒×8〜10回。慣れたら立って同じ動きを。
② ゆっくりかかと上げ(ぐらつく人)
壁に手を添え、2秒かけて上げ、2秒かけて下ろす。足首が内側に崩れないように、でも外側だけに体重を逃がさないように。目安:8〜12回×2セット。

③ 足首・ふくらはぎのストレッチ(足首が硬い人)
壁の前で、かかとを床につけたまま膝をゆっくり壁へ。または、片脚を後ろに引いてふくらはぎを伸ばす。目安:ゆっくり10回、またはストレッチ20〜30秒×2回。
④ 股関節の運動(膝が内に入る人)
横向きに寝て、上の脚をまっすぐ、少し後ろに引いて持ち上げる。目安:10〜15回×2セット。そのあと、浅いスクワットで膝とつま先を同じ向きにそろえる練習を。
歩くときは「強く蹴る」より、自然な体重移動を
足の指で地面を強くつかんだり、無理に蹴ったりしなくて大丈夫です。力みすぎると、かえって前足部に負担がかかります。意識するのは、歩く後半でかかとが自然に上がること、体重が親指の付け根へ滑らかに移ること。この2つで十分です。(足元と膝のつながりは、その膝の痛み、原因は「膝」じゃないかももどうぞ)
日常の負担も、一緒に見直す
靴やインソールは、負担を減らす選択肢の一つです(足に合っているか、かかと周りが安定しているかを確認)。頼りきりにせず、足を育てることと組み合わせましょう。痛みが強い日は、我慢して同じ距離を歩かず、休憩をはさむ。裸足で硬い床がつらいなら、室内履きを試す。(おしゃれな靴で歩き回った日の夜、足が悲鳴もどうぞ)
やりがちな、もったいないケア
- アーチを一日中、力で持ち上げようとする … 疲れるだけ。必要なときに働かせる練習を。
- 足の指を強く握り込む運動だけを続ける … 指を曲げるのが上手になるだけのことも。アーチを支えるなら、指を丸めないショートフットを優先。
- 足だけ見て、足首・股関節を無視する … 膝が内に入るクセが残ると、足だけ頑張っても戻りやすい。
- 痛いのを我慢して続ける … 回数が多いほど早く良くなるわけではありません。
どのくらい続ければいい?
足の使い方は、数日では変わりません。まずは週3回以上、6〜8週間を目安に。悪化する・数週間たっても変化がない・歩ける距離が短くなる場合は、自己流を続けず、整形外科や理学療法士に相談してください。
まとめ
- 扁平足は、足の内側のアーチ(土踏まず)が低くなった状態。でも、低い=必ず痛い、ではない
- 困る人と困らない人の差は、歩く後半に足を「固められる」かどうかにあることが多い
- 足の倒れ込みは、膝が内に入る(ニーイン)など、上へ連鎖していく
- ケアは「形を直す」より「働きを育てる」。チェック結果に合わせて選ぶ
- 骨の形は変えられなくても、**「扁平足でも困らない足」**は目指せる
- 大人になって片足だけアーチが下がる・内くるぶしの後ろが痛む場合は、受診を
足の悩みは、形だけが答えではありません。今日できることから、始めてみてください。
よくある質問
Q. 扁平足は治りますか?
A. 骨の形そのものが大きく変わることは、多くありません。ただ、足を支える力や使い方は練習で変えられます。「アーチを元に戻す」より「扁平足でも疲れにくい足にする」を目標にするのが現実的です。
Q. 扁平足だと、必ず足が痛くなりますか?
A. いいえ。扁平足でも困っていない人はたくさんいます。差は、形よりも、歩くときに足をしっかり働かせられているかどうかです。
Q. インソールは必要ですか?
A. 足の倒れ込みを支えることでラクになる方もいます。ただ、頼りきりにせず、足の力を育てることと合わせるのがおすすめです。合うかは人によるので、気になる場合は専門家に相談を。
Q. 足底腱膜炎とも関係ありますか?
A. 関係することがあります。足の倒れ込み・アーチの低下は、足底腱膜炎の負担にもつながります。両方が重なる方も多いです。(足底腱膜炎がなかなか治らないもどうぞ)
個別でのご相談を承っています
ここまでのセルフケアを試しても改善しない、自分の場合の原因や対処法をもっと詳しく知りたい、という方には、個別でのご相談も承っています。理学療法士が、あなたの状況に合わせたセルフケアをアドバイスいたします。
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参考文献
- “Comparing the efficacy of exercise therapy on adult flexible flatfoot individuals through a network meta-analysis of randomized controlled trials.” Scientific Reports. 2024.
https://www.nature.com/articles/s41598-024-72149-w - “A comprehensive exercise program improves foot alignment in people with flexible flat foot: a randomised trial.” Journal of Physiotherapy. 2023.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36526555/


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