この記事は理学療法士歴7年・認定マッケンジーセラピスト(Cred. MDT)が執筆しています。整形外科外来やリハビリの現場での経験をもとに、できるだけ専門用語を使わず、わかりやすく解説します。
椅子から立ち上がるとき、階段を降りるとき、膝がズキッとする。
そういうとき、多くの人は「膝が悪くなった」と思います。そして、膝をさすったり、膝用のサポーターを買ったり、膝そのものをなんとかしようとします。
でも、ちょっと待ってください。その膝の痛み、原因は膝じゃなくて、”足元”にあるかもしれません。
申し遅れました。はるとです。理学療法士として7年、整形外科の現場で膝や足の患者さんを診てきました(認定マッケンジーセラピスト/Cred. MDT)。その経験から、はっきり言います。
膝が痛い人の原因を探っていくと、膝より下——足首や足——にたどり着くことが、とても多いんです。
この記事では、なぜ足元が膝の痛みにつながるのか、そして今日から何をすればいいのかを、理学療法士の視点でお伝えします。前回の「靴と足のケア」の記事の、膝バージョンだと思ってください。
まずセルフチェック|あなたの膝痛、足元が関係してる?
当てはまる数を数えてみてください。
- [ ] 立ち上がるとき、階段を降りるときに膝が痛む
- [ ] しゃがもうとすると、かかとが浮く/後ろに倒れそうになる
- [ ] 足首が硬い(足を上に反らしにくい)
- [ ] 片脚立ちがグラつく、バランスが取りにくい
- [ ] 歩くとき、膝が伸びきらず、曲がったままな気がする
- [ ] 膝の治療やマッサージをしても、またすぐ痛くなる
3つ以上当てはまるなら、膝だけの問題ではない可能性が高いです。 特に「足首が硬い」「しゃがむとかかとが浮く」に当てはまる人は、この記事の内容がそのまま当てはまります。理由を説明します。
なぜ、足元が膝の痛みにつながるのか
先に結論です。足首が硬いと、膝がその”しわ寄せ”を引き受けるからです。
順番に、かみ砕いて説明します。専門用語はその都度、言い換えます。
① 足首が硬いと、重心を前に運べない
しゃがむ、立ち上がる、階段を降りる——こういう動作では、すねが前に倒れて、体重を前に運ぶ必要があります。このときに必要なのが、足首を上に曲げる動き(背屈=はいくつ、といいます。足の甲を すね に近づける動きです)。
この足首の背屈が硬いと、すねを前に倒せない。すると、重心を前に運べなくなります。
② 膝が代わりに働く(代償)
重心を前に運べないと、体はどこか別のところで、その動きを穴埋めしようとします。これを「代償(だいしょう)」と言います。
足首が動かないぶん、膝を余計に曲げたり、無理な角度で使ったりして、なんとかバランスを取ろうとする。 その結果、膝に負担が集中していきます。
③ 膝への負担が積み重なる
これが毎日、何百回という立ち座り・歩行で繰り返されると、膝への小さなストレスが積み重なっていきます。膝そのものは悪くなくても、「足首のぶんまで膝が働かされている」状態が続くわけです。
だから——膝が痛いからといって、膝だけをケアしても、根本は変わらない。足首という”上流”が詰まったままだからです。ここが、この記事で一番伝えたいことです。

臨床で感じること
ここからは、私が理学療法士として、実際に膝の痛い患者さんを診てきて感じていることをお話しします。一般論ではなく、現場での実感です。
膝が痛い人の多くは、膝だけが問題ではありません。 バランスを取る能力の低下、筋力の低下、関節の動きの制限——こうした複数の要因が、絡み合っていることがほとんどです。
その中でも、私が特に多いと感じるのが、足首の背屈制限(足首が上に曲がりにくい)から、重心を前に運べていないケースです。
具体的には、こんな様子として現れます。
- 足首が硬くて重心を前に出せないぶん、膝を曲げて代わりに帳尻を合わせている
- 横に揺れたとき、バランスを保とうとして膝を内側や外側に傾けている
- 歩いているあいだ、膝がずっと曲がったまま伸びきらない
こうした人を見ていると、膝へのストレスの”原因”が、膝ではなく足部(足・足首)にあることが、本当に多いと感じます。だから膝だけを治療しても、足元が変わらなければ、またすぐ戻ってしまう。
これは、研究でも裏づけられています
「臨床でそう感じる」だけでなく、この足首と膝の関係は、研究でも報告されています。分かりやすく、かみ砕いて紹介します。
- 足首の背屈が制限されると、着地やしゃがみ込みのときに膝を十分に曲げられず、膝が内側に入る動き(膝への負担が増える動き)や、地面からの衝撃が増える ——複数の研究がこう報告しています。つまり「足首が硬い → 膝が代わりに負担を受ける」が、数字でも確認されているということです。
- 足首の背屈の動きが小さい人ほど、股関節や膝の曲げが浅くなり、膝まわりの筋肉への負担のかかり方が変わる ——という報告もあります。
※ ただし正直にお伝えすると、これらの研究の多くは、ジャンプの着地など”スポーツ動作”を対象にしたものです。中高年の日常動作(立ち座りや歩行)そのものを調べたものではありません。ですので「スポーツの研究で示されている傾向が、日常動作でも臨床的に感じられる」という受け止め方が、正確です。
大事なのは、膝だけを見ないこと
まとめると、膝の痛みは、膝・足首・足・バランス・筋力が連鎖した結果です。膝だけを見ても、良くはなりません。 上流にある足首や足を整えて、はじめて膝がラクになっていきます。
今日からできるケア|足首と膝のリセット

膝の負担を減らすために、その”上流”である足首を中心にケアします。難しい動きはありません。全部やっても5〜10分です。
ケア①|足首の背屈ストレッチ(一番大事)
硬くなった足首を、上に曲がるようにするケアです。膝痛のケアなのに足首?と思うかもしれませんが、ここが肝です。
- 壁に両手をつく
- 片脚を後ろに引き、かかとを床につけたまま、すねを前に倒すイメージで足首を伸ばす
- ふくらはぎ〜アキレス腱が伸びるのを感じて、20秒キープ×左右2回
ポイント: かかとを浮かせないこと。痛気持ちいいところで止め、反動はつけない。
ケア②|しゃがみ込みで足首を動かす
足首を「深く曲げる」動きを取り戻します。
- 何かにつかまりながら、ゆっくりしゃがむ
- かかとが浮かない範囲で、いけるところまで
- 5〜10回、ゆっくり
ポイント: かかとが浮く、後ろに倒れそうになる人は、足首が硬い証拠。無理せず、つかまって行う。
ケア③|太ももの前を鍛える(膝を支える力)
膝を守る筋力を、軽く入れます。
- 椅子に座り、片脚をまっすぐ前に伸ばす
- 膝を伸ばしきって、太ももに力を入れ、5秒キープ
- 左右10回ずつ
ポイント: 痛みが出ない範囲で。反動をつけず、じんわり力を入れる。
この3つを、膝が気になる日の習慣にしてください。膝そのものより、足首から整える。 これが、はるとが一番伝えたいことです。
予防|「見た目」と「身体」、どちらを優先していますか

ここは、前回の靴の記事とも共通する、大事な話です。
人は、見た目を気にします。人から見られたときに、デザイン性のある靴や服を身につけていると、自分の気持ちも良いし、周りからの評価も上がって、その日一日が気分よく過ごせる。これは、とても自然なことです。
ただ、ここに落とし穴があります。「その日の目的に合った格好」を頭で優先すると、体は、その靴や服の形・質に合わせた動き方を”させられる”んです。 デザイン優先の靴が、足首や膝の動きを制限し、それが積み重なっていく。
誤解しないでください。デザインを選ぶことが悪いのではありません。 おしゃれは大事です。私が伝えたいのは、「自分の身体を優先したうえで、デザインを選んでほしい」ということです。順番の問題です。見た目だけで選ぶのか、身体のことも考えたうえで選ぶのか。この一手間で、数年後の膝が変わります。
そしてもう1つ。たとえ機能性の良い靴を選んでも、それだけで体が良くなるわけではありません。 大事なのは、その後のケアです。
正直に言うと、ケアを怠る人が、本当に多い。痛くなってから慌てる。でも、痛くなる前に、日々のケアを続けることでしか、体は守れません。だからこそ——なぜケアが必要なのか、その理由を分かったうえで続けてほしいと、私はいつも思っています。この記事が、その「なぜ」になれば嬉しいです。
こんな時は、医療機関へ
セルフケアは万能ではありません。次のような場合は、自己判断せず、整形外科などの受診をおすすめします。
- 膝が腫れている、熱を持っている、水がたまっている感じがする
- 安静にしていても痛い、夜に痛む
- 膝がガクッと崩れる、引っかかってロックする
- 歩けないほどの痛みがある
- 数週間ケアしても、痛みが引かない
「年のせいだから」と諦めて放置する人が多いですが、膝のトラブルは、早いほど対処がシンプルで済みます。 迷ったら、専門家に診てもらってください。
まとめ
- 膝の痛みの原因は、膝ではなく”足元”にあることが多い
- 特に足首の硬さ(背屈制限)があると、重心を前に運べず、膝が代わりに負担を引き受ける
- この「足首→膝」の関係は、スポーツ動作の研究でも裏づけられている(日常動作でも臨床的に同様の傾向を感じる)
- だから膝だけをケアしても、根本は変わらない。上流の足首から整える
- 今日からできるのは:①足首の背屈ストレッチ ②しゃがみ込み ③太ももの前を鍛える
- 予防の本質は「見た目より、まず身体を優先して選ぶ」こと。そして選んだあとのケアを怠らないこと
痛みは、出てから慌てるものではなく、出る前に手を打つもの。膝が気になり始めた今が、足元を見直すタイミングです。
よくある質問
Q. 膝が痛いのに、足首をケアするのはなぜですか?
A. 足首が硬いと、その動きの不足を膝が肩代わりして、膝に負担が集中するからです。膝は”結果”で、”原因”が足首にあるケースが多いため、上流の足首を整えることが、膝をラクにする近道になります。
Q. 膝用のサポーターやマッサージは意味がないですか?
A. 一時的に痛みが和らぐのは良いことです。ただ、原因が足元にある場合、サポーターやマッサージだけでは繰り返しやすい面があります。その場の対処と、原因(足首・足)へのケアを、両方やるのがおすすめです。
Q. 変形性膝関節症と言われました。この記事のケアをしていいですか?
A. 自己判断は避けてください。診断がついている場合は、まず主治医や担当の理学療法士に、どこまで動かしていいかを確認しましょう。そのうえで、許可された範囲でケアを行うのが安全です。
個別でのご相談を承っています
ここまでのセルフケアを試しても改善しない、自分の場合の原因や対処法をもっと詳しく知りたい、という方には、個別でのご相談も承っています。理学療法士が、あなたの状況に合わせたセルフケアをアドバイスいたします。
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参考文献
- Mason-Mackay AR, Whatman C, Reid D. “The effect of reduced ankle dorsiflexion on lower extremity mechanics during landing: A systematic review.” Journal of Science and Medicine in Sport. 2017;20(5):451–458.
(足首の背屈制限が、着地時の下肢の動きを変化させ、ケガのリスクを高めうることを示したレビュー研究)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26117159/
• Taylor JB, et al. “Ankle Dorsiflexion Affects Hip and Knee Biomechanics During Landing.”(足首の背屈可動域が、着地時の股関節・膝関節の動きに影響することを検討した研究)
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9112706/
• Zhang X, et al. “The Effect of Different Degrees of Ankle Dorsiflexion Restriction on the Biomechanics of the Lower Extremity in Stop-Jumping.” Applied Bionics and Biomechanics. 2024.
(足首の背屈を制限する角度を変えて、膝まわりへの負担がどう変わるかを調べた研究)
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1155/2024/9079982


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